ABS樹脂で海外攻める JSR・三菱ケミなど3社連合発足 – 日本経済新聞



 自動車や家電などに使われる「ABS樹脂」の国内最大手で、JSR宇部興産、三菱ケミカルが出資するテクノUMG(東京・港)が4月1日に発足した。平野勇人社長は11日に都内で記者会見を開き、「統合によりコスト競争力を高めて海外を攻めていく」と意気込みを示した。国内製造業の海外進出により国内需要が縮小しているABS樹脂。足場を固める統合で成長戦略を描けるのか。

記者会見するテクノUMGの平野勇人社長(左)と松永悦夫副社長(11日、東京・港)

 「日本のABS樹脂メーカーではナンバーワンになった」。平野社長は11日、こう胸をはった。それもそのはず。テクノUMGは、JSRが100%出資するABS樹脂で国内首位だったテクノポリマー(東京・港)が、宇部・三菱が50%ずつ出資する同2位のUMG ABS(東京・中央)の事業を吸収したためだ。テクノUMGへの出資比率はJSRが51%、UMG ABSが49%。売上高が約850億円となり、国内の競合他社を突き放す。

 統合を決めた背景にあるのが、国内市場の縮小だ。

 ABS樹脂はアクリロニトリルとブタジエン、スチレンを合わせたもの。国内では半数が自動車の内外装部品に使われ、残りはOA機器や冷蔵庫・ゲーム機向け。国内需要はピークだった1990年ごろは50万トン超だったが、国内製造業の海外移転に伴って、現在は30万トン弱に縮小している。「今後も国内需要は減ることはあっても、増えることはない」(業界関係者)。

 平野社長は「具体的な計画はこれからつくる」と明言を避けたものの、統合でコスト競争力や製品開発力を高める考えを示した。攻めるのは、約800万トンの需要がある世界市場。「これまでも日本企業の海外工場向けに輸出してきた。今後は今までドアをノックしていない海外企業から注文を取りたい」

 日本にある3工場を合わせた生産能力は年40万トン。合併前にはテクノポリマー(生産能力約25万トン)、UMG ABS(同約15万トン)がそれぞれ生産量の半分を輸出していたが、これを増やす考え。

 成長分野に据えるのは、作ったABS樹脂をそのまま供給する汎用品ではなく、耐候性などの品質や付加価値を高めた製品。「自動車ではUMG ABSはメッキや塗装などの外装品、テクノポリマーは肘掛けなどの内装部品向けが得意。それぞれの強みを融合させたい」(平野社長)。

 ABS樹脂は再編を繰り返してきた分野だ。かつては10社ほどが国内にあったが、テクノUMGの誕生により、住友化学三井化学が出資する日本エイアンドエル、東レデンカ旭化成の5社体制となった。

 世界を見渡すと、体力の差は歴然だ。年間生産能力でみると、世界最大手の台湾の奇美実業は約180万トン、韓国のLG化学は約150万トン。「汎用品を輸出しても勝てない。あくまで付加価値のある製品でやっていくしかない」(平野社長)。生き残りをかけた闘いの火蓋が切られた。

(渡辺伸)





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