年功序列 社内に閉塞感 味の素社長兼最高経営責任者・西井孝明さん – 毎日新聞



西井孝明・味の素社長



異業種の人事担当者と交流する人事部長時代の西井孝明さん(後列右から2人目)=2011年撮影、本人提供

諦めず成果主義導入

 発酵技術など最先端テクノロジーに挑戦している会社の成長性に魅力を感じて入社しました。営業や商品開発など担当が変わるたびに壁を感じましたが、最も苦労したのは2002年に人事畑に移ってからでした。

 00年代初め、多くの企業は国内事業で停滞期を迎えていました。右肩上がりで成長が続く間は事業拡大で幹部の数も増え、年功序列に基づく人事制度が一番公平感がありました。しかし、停滞期には社内のポジションも減り、組織の流動性も失われます。人事に異動したころは、味の素でも年功に基づく部門ごとの縦割り人事が定着し組織が硬直化する「大企業病」に陥っていました。社内には閉塞(へいそく)感があり、その脱却に向けて取りかかったのが成果主義の導入で、私は成果や職務に応じた新たな人事制度への切り替えを進める責任者になりました。

 ところが、いざ導入しようとすると各事業部門には、年功に基づく人事ローテーションが厳然と残っており、私が理想とする人事制度に近づけることができませんでした。成果主義を意識した人材育成も頓挫。最初の2年間は苦労からか何度も体調を崩し、散々な結果となってしまいました。

 04年に子会社に出向し、09年に戻って人事部長に就きました。当然、成果主義の導入を諦めていませんでした。就任直後から上層部に人事制度の改良案を提案しましたが、何度も突き返されました。諦めずに説得を続けたところ、半年後に成果主義を一部取り入れた人事制度が採用されました。ところが、その制度も味の素全社に行き渡らず、人事部長としても年功序列の壁を崩せませんでした。

 ただ人事部長時代に参加していた異業種勉強会で、経営統合を機に人事制度を改めた世界的企業の人事担当者から「経営トップと人事責任者の考えを一致させるのが重要だ」と聞きました。卓越した見識に大いに刺激を受けました。13年から社長を務めたブラジル子会社での見聞も大きかったです。年齢や人種などに関係ない人事が行われており、多種多様な人材の活力が企業の成長を生み出すのだと体感しました。こうした経験を通じ、味の素が成長するためには私が目指す人事制度は必要だと確信を持ちました。結局は15年の社長就任後、成果主義に基づく人事制度を全社で導入。人事に関わるようになって10年以上かかり、やっと実現できました。

 大事なのは将来を見据えた方針を持ち続け、諦めないことです。今も多様な人材の活用に向け、例えば20年度までに女性幹部比率を2割に引き上げる目標を持つなどの取り組みを進めています。所定労働時間の削減など働き方改革をさらに進めるのも私の課題です。<聞き手・竹地広憲>


 ■人物略歴

にしい・たかあき

 1959年生まれ。同志社大文学部卒、82年入社。味の素冷凍食品家庭用事業部長、人事部長、ブラジル味の素社長などを歴任。2013年から常務執行役員、15年から社長兼最高経営責任者(CEO)。奈良県出身。58歳。






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