政策編/中 超低金利、苦渋の地銀 高リスク融資/米債投資失敗 – 毎日新聞





 9日に民事再生法の適用を申請した不動産会社「スマートデイズ」(東京)。単身女性向けのシェアハウスを1億円以上で会社員らに販売し、その物件を借り上げて所有者に賃借料を支払うという特異なビジネスモデルを、物件購入の資金を融資する形でスルガ銀行(静岡県沼津市)が支えた。積極融資の底流には、日銀の超低金利政策があった。

 「『超低金利が終わってからでは遅い』とスマートデイズの担当者に言われ、追い立てられるような感覚で契約した。自分が情けない」。所有者の男性(42)は悔しさをあらわにした。

 同社は「賃料収入保証」「高利回り」といった誘い文句で顧客を集めた。結局、入居率は低迷し、保証した賃借料を払えずに経営破綻。借金を抱えた所有者は約700人に上った。

 スルガ銀は地銀経営が低迷する中、個人向けに注力した融資姿勢で高収益を上げてきた。だがスマートデイズ破綻で「被害者」が出ていることについては「事実関係を確認中」とコメントするのみ。ある不動産関係者は「日銀の超低金利政策で貸し出し競争が激しくなる中、実績を作ろうと審査が甘くなり被害を拡大させた」とみる。

 「債券の運用は難しい」。大阪を地盤とする池田泉州銀行の藤田博久頭取は3月、毎日新聞の取材に苦渋の表情を浮かべた。米国債への投資失敗で、2017年4~12月期に126億円の売却損を計上したからだ。

 もともと同行は大量の日本国債を保有し、地道に運用益を稼ぐのがスタイルだった。黒田日銀がスタートした13年3月末時点で、1・2兆円の有価証券のうち、日本国債は3分の1を占めた。

 ところが黒田氏が就任直後に導入した大規模緩和や16年2月のマイナス金利の影響で国債利回りは低下(国債価格は上昇)。日本国債では運用益が見込めないことから6分の1程度に保有を減らし、利回りの高い米国債の購入量を増やした。だが16年秋の米大統領選でトランプ氏が当選すると米国債の金利が急騰(価格は急落)。巨額損失の計上を迫られた。

 地銀がリスクの高い融資や投資にのめり込むのは、いくら貸し出しを増やしても、超低金利のため、もうかりにくい構図になっているためだ。全国の銀行による不動産向け貸出残高は昨年3月末時点で72兆円を突破し4年前に比べ18%増えた。それでも銀行全体の利益(業務純益)は3兆7000億円と25%減っている。金融庁は「25年には地銀の過半で本業の利益が赤字に転落する」と予想する。

 日銀は、銀行財務が健全で貸出額も伸びていることを理由に「金融政策によって、銀行の機能に影響は出ていない」との立場だ。だが第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは「多くの銀行は株式売却益や企業の破綻に備えた引当金を戻し入れて利益を維持している。リスクの高い投融資も増やしており、景気後退局面に入った途端に損失が表面化する可能性がある」と危うさを指摘する。


 ■ことば

マイナス金利

 日銀が2016年2月に金融緩和の一環で導入した政策。金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に0・1%の「手数料」を課す。お金を日銀に預けると損失が生じるため、銀行などが貸し出しや投資を増やす効果が期待される。導入後、長期金利(10年物国債利回り)が一時マイナス水準に落ち込むなど金利全般が大きく低下。不動産融資などが増加した一方、金融機関の貸し出し利ざやや債券運用益が大幅に減少した。






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