危機管理経営に必要な「悪魔の参謀」 – Forbes JAPAN



ネットで「東芝」と検索すると、「退職しました」という言葉が出る昨今。10月24日に開かれた臨時株主総会でも「これだけ退職者が出て、本当に再建できるのか?」という、当然の疑問が飛んだ。

神戸製鋼、日産など、日本を代表する大企業の不祥事が相次ぎ、東芝にいたっては会計不正が「自壊」に及んでいる。危機管理の専門家で、フォーブス ジャパン・オフィシャル・コラムニストの蛭間芳樹氏が提案するのは、欧米でトレンドとなっている「レッドチーム」。またの名を「悪魔の参謀」である。


社内に「空気を読まないチーム」をつくろう。そう言われても、ピンとくる読者はいないだろう。

実は、組織を強くするために、昔から行われている手法であり、それはローマ・カトリック教会で「悪魔の代弁者」という職業として設けられていたものだ。かつてローマカトリック教会による聖人認定は、かなり場当たり的に行われていた。聖人認定とは「列聖」と呼ばれるもので、「信仰の模範となるにふさわしい信者を聖人の地位にあげる」ことを言う。

しかし、この列聖が「聖人の安売り」とも言うべき状態に陥っていたという。

「悪魔の代弁者」の仕事は、列聖の候補に足る証拠や当人の略歴、あるいは当人の徳や業績に対して問いを投げつけ、反対意見を徹底的に述べることだ。これにより各候補者の聖人乱立になることを防いだ。このように、「教会の執行陣の判断が間違っている」という前提から、物事を考える役職を組織内に組み込むことで、ローマカトリック教会はその後の聖人認定を極めて厳格に、適切に、持続的に進めることができた。

この「悪魔の代弁者」を、現代の組織運営にまるで参謀の如く意識的に取り入れる試みが、悪魔の参謀という名の「レッドチーム」だ。

レッドチームの先駆けは、2004年に開設された米国カンザス州にある軍事・外国文化研究大学(通称レッドチーム大学)だ。同大学は、退役した元陸軍大佐グレッグ・フォンテノット氏が率い、組織内に悪魔の提言者を養成することを目的としている。その後、国家機密機関や研究機関が採用し、現在では欧米の民間企業にも広がっている組織運営の新しいトレンドである(同大学のHPに、レッドチームハンドブックが公表されている。現在改定第7版で、250ページもの大作であり、批判的思考を身に着ける情報が無料で公開されている)。

まず、レッドチームは「前提を疑う」ことから始める。

いかなる企業も脆弱性と無縁ではない。危機時にはそれが顕在化しやすいが、ほとんどの企業は幸運にも何らかの形で危機を乗り越えてきた。それを平時から意識的に行うのがレッドチームの機能や役割となる。前提を疑うこと─すなわち「What if?」を次から次へと提示し、以下の手法をもって経営陣の思考の前提や組織的バイアスを揺さぶるのだ。

悪魔の参謀たちによる経営陣への囁き
・経営者が描いている将来像の前提を疑い、それは幻想だと伝える
・企業文化や倫理観を真正面から否定する
・反対意見をステレオタイプ化し棄却する組織の思考パターンを提示する
・思想の番人(根回し小役人の意)を見つけ出し、彼の会話を公表する
・組織は一枚岩であるという錯覚を打ち砕く(組織に不満を持つ従業員の声ばかり集める)

悪魔の参謀の機能
・シナリオプランニング(PEST、5S、SWOT、U理論など)
・経営資源のサステナビリティ(またはレジリエンシ―)・アセスメント

悪魔の参謀の効用
・経営者を後知恵で批判することではなく、彼らがよりよく考えられるように、普段なら考えない観点や選択肢を提示する
・経営計画や業務に対して、多様な認識にもとづく、客観的評価を得る
・将来の経営計画は、未だ実証されていない経営者の仮説であるため、誰かに疑問を呈してもらわなければ、慣習と自己満足がはびこり、それに執着するようになる





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