フリー人材に独禁法適用 企業の過剰な囲い込み防止 – 日本経済新聞



 企業と雇用契約を結ばずに働く技術者やスポーツ選手らフリーランス人材が独占禁止法で保護される。労働分野に独禁法を適用するための運用指針で、企業が人材を過剰に囲い込んだり成果物の利用制限をかけたりするのを法違反の恐れがあると位置づけた。働き方の多様化やシェアリングサービスの拡大を踏まえ、不利な立場になりがちなフリーランスの労働環境を改善する。

 公正取引委員会が15日、有識者検討会の報告書を公表した。これが労働分野に独禁法を適用するための事実上の運用指針になり、今後、この考え方に沿って運用する。

 公取は技術者やスポーツ選手など契約実務が現状に追いついていない点を問題視。適正な額の報酬や、社会全体でみた適材適所を実現するには、不利な取引条件の押しつけや人材囲い込みを是正する必要があるとした。企業との取引関係で不利になりがちなプロ人材に労働法制以外にも対抗手段を与えることで、多様な働き方が確保される土壌をつくる。

 指針では具体的な違反行為を例示。企業が「秘密保持契約」を盾に競合他社との契約を過度に制限する行為や、イラストやソフトなどの成果物に必要以上に利用制限や転用制限をかける行為などが「優越的地位の乱用」にあたる恐れがあるとした。

 1社単独の違反行為以外にも、複数の同業他社間で、賃金の上昇を防ぐために「互いに人材の引き抜きはしない」と申し合わせればカルテルになるとしている。

 報告書をまとめるにあたり、フリーのコンサルタントやライター、通訳・翻訳家、デザイナーなど約550人にアンケート調査を実施した。企業側から契約書面が交付されない例が34%、追加作業に必要な費用を負担してもらえない例が37%あった。

 このほかにも「フレックス制で契約しているのに、フルタイムで働かなければ契約を切ると言われた」「事前に知らされていない条件に基づき、何度も作業の修正を繰り返させられた」など企業側の違反が疑われる回答があった。不利な取引条件を受け入れている実態が浮き彫りになった。

 日本では独禁法の制定時に「労働の提供は事業ではない」(立法を担当した橋本龍伍元厚相)との考え方を示しており、長らく労働分野には適用されていなかった。

 公取委は今回、初めて労働分野にも独禁法が適用されることを明確にした。ただ、指針はあくまでフリーランスと企業の契約を巡るもので、労働組合を「カルテル」として摘発したり、上司と部下の関係に優越的地位の乱用を適用したりすることはないとしている。





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